ふつうのこと
ふつうの広島 Advent Calendar 2015 - Adventar
10代の終わり頃。
だいたい深夜0時をすぎたころにエンジンがかかるが、実は1時間と持たない。半分寝ながらMacのイラレが固まってんだか動いてんだかわかんないのを数十分待ったり、印画紙がトロトロ流れて出てくるのを待ったりしていた。
20年近く前の当時にしてもすでに時代遅れなヤンキースタイルの頭髪の上司は、イカツい顔の割に優しく情に熱い兄貴分で、いつも深夜まで残業につきあってくれる。
高校時代から使っていたボロボロのチャリに乗って、真っ暗な駅裏をのんびり走ると、後ろから足を組んだまま原チャに乗った職場のパイセンが「プッ」っと短いクラクションを鳴らして追い越してく。
20代の初め頃。
深夜のコンビニにいた超ロン毛のバイトは、酔っ払いに絡まれてメガネを壊されていた。
別の酔っ払いは工具箱を見せて「これでビルを建てる」んだと陽気に話してくる。
明け方にくるいつものおっちゃんは「セブンイレブン2つ」とタバコを指差したが、それがセブンスターの間違いなのかマイルドセブンの間違いなのかは言われなくてもわかっている。
20代の後半。
急に朝型になって、髪を切った元ロン毛はおっさん時代のスタートを切る。
なぜか山に登ったり、犬と遊んだりするのが楽しくなる。
ビオトープに興味を持ったり、自然を守ろうとか、文化を守ろうとか自分の状況を棚に上げて、頼まれてもいない形の無い妄想のようなものを追いかける。
30代の前半。
仕事はしているのにまるで浮浪者のように街を彷徨う生活をする。
街のいろんなところで仕事ができるようになったのが、むしろ住所不定者のように見えるのだ。
実際の住所も転々とする。
そして、いろんな仲間とめぐり合う。
30代の後半。
ぼくが「これはほんとうに重要」と思っていることは、実は大したことじゃないんじゃないかと思う。
いつもたいしたことない、どうでもいいことが、今となっては、思い返してみたら、重要だったんだと思う。
その時、その瞬間が。
そんな、ふつうのこと。